議会質問と答弁

2020年第2回定例会 代表質問(6月10日)

《 質問概要 》

1. 持続可能な世田谷区をめざして

・今後取り組む事業見直しの基本的スタンス

・保健所機能の強化

・市民活動への支援   など

2.誰もが暮らし続けられる福祉都市世田谷をめざして

・介護現場への支援

・障害者施設への支援

3.学校教育のあり方と子どもが育つ環境について

・コロナ以降、世田谷区が目指す公教育のあり方

・対面が難しい状況を踏まえた虐待対応   など

4.ジェンダー平等の社会をめざして

・DV被害者の現状認識と支援

・心のケア体制について

5.感染症対策を視野に入れた災害対策を

・ボランティア受け入れの課題

・感染症対策を含む避難所運営の徹底  など

6.環境都市世田谷をめざして

・気候変動非常事態宣言について

《 質問原稿&答弁 》

世田谷立憲民主党社民党を代表して質問いたします。

今般の新型コロナウイルス感染拡大によって、お亡くなりになられ方々へ謹んでお悔やみを申し上げますとともに、現在も闘病中の皆様、外出自粛により影響を受けている全ての方々にお見舞いを申し上げます。そして、医療従事者の方々の日々の働きに敬意を表するとともに、介護現場などで働く方へ心から感謝を申し上げます。

1.持続可能な世田谷区をめざして

新型コロナウイルス感染拡大防止の緊急事態宣言による外出自粛が約2ヶ月間続きました。全ての都道府県で緊急事態宣言が解かれましたが、東京では1日の感染者数は20人前後を行ったり来たりする状況で、このまま緩やかに第2波に突入する可能性も否めません。

4月から続いた外出自粛策が新型コロナ感染拡大防止の決め手となったかは専門家でも意見が分かれていますが、誰もが認めるのは経済が受けた打撃の深刻さです。

2人にひとりが奨学金を受給する学生たちはアルバイトを失い学業の継続や家賃の支払いもままならない状況になりました。また、増加する非正規雇用者には、休業要請が続き雇い止めなど職を失う事態が拡がっています。もしも、社会保障制度がセーフティネットとして十分に機能するのであれば、このような窮状に見舞われたとしても、一定の保障を得ながら感染症への対応を安心して行うことが出来たはずです。しかし、現実は、医療、福祉、社会保障が行き届いていない日本社会の姿をあらわにしました。

ここで押さえるべきは、日本の経済の弱体化は単純にコロナ感染対策が原因ではないということです。事業者の倒産件数は、コロナの影響がまだない昨年12月から4ヶ月に渡り10%以上を記録しました。これはリーマンショック後を上回る状況で、3月の都内の倒産件数は146件と同年同月比15%増です。日本経済がもともと疲弊していたところに昨年10月の消費税増税などの打撃が加わり耐久力を失っていたことや社会保障の脆弱さが後押しし、現在の状況を生み出していることを念頭におくことが必要です。これまで国民の自助努力に頼りなんとかやり過ごしてきた無策とも言える政府の経済政策の失敗が、コロナ感染防止のための経済活動の中断により最終的な引き金を引いたのです。この根深い経済の疲弊を前提とした区財政の立て直しを考えなくてはなりません。

今年度の区の歳入歳出は予算通りにはいきません。区は今後の財政の先行きを見極め、区民生活を守るための事業見直しに着手せざるを得ません。事業見直しにあたり当面の課題として、例えば、区が災害対策の拠点として優先課題とする新庁舎建設については、現在でもその必要性には変わりはないものの、現在の状況を考え合わせると、慎重に対応すべきと考えます。また、私たち会派が主張してきた普遍的な支援としての教育の無償化は、これからますます重要な政策です。

さらに、どのような状況にあっても、政策決定プロセスの透明性を確保することは区政運営への信頼を保つために大変重要です。政府の行ったアベノマスク配布や持続化給付金の事業委託には政策決定内容の不透明さから国民の間に疑問が広がっています。今後もコロナ対策を理由に専決処分の多用や安易な随意契約などには注意を払い慎重に取り扱うことを求めます。財政的に厳しい状況になることが予想されているからこそ、予算をどのように配分するかが、より一層注目されていることを肝に銘じる必要があります。

  1. 事業見直しにあたっては、区民の納得を得るためにも、単なるコストカットにならないよう区民の生命と暮らし、雇用と経済の維持という区の基本的な姿勢を持つことが大切です。また、区の将来像を見据え優先順位をつけて実行することが必要です。考えをお聞きします。

【答弁・保坂区長】

 厳しい将来が予想されるが、厳しい中でも温かさを忘れずに臨みたい。大幅な歳入減少が見込まれる中、区民生活に必要な事業を適切に継続するためには、既存の事務事業について多方面から見直しを進め、財源を確保していくことが必要。

 見直しにあたっては、区民の参加と協働をして意見を活かしながらの展開と基本構想に掲げる区の将来像を見据えながら、新型コロナウイルス感染症の拡大がもたらした地域社会や生活様式の変化を踏まえ、行政が担う施策事業のあり方をどう変えていくべきか、従来通りの事業の継続を前提とせず、どう変えていくのか本質的な見直しをする必要があると考えている。

 その際には、単なるコストカットにとどまらず、新型コロナウイルス対策とともに生きる地域社会づくりを展望し、感染症の拡大防止、区民の生活と民間、NPOとの事業の活動の維持・活性化、高齢者の社会参加の支援、子どもの育ちと学びの保障を柱に最優先で取り組んでいく必要があると考えている。

 今後の具体的な見直しの取り組み方針については、感染症拡大の経済への影響を踏まえた中期財政見直しや、令和3年度予算編成方針と合わせて、8月を目途にお示ししていく。

  1. 今後の体制整備が望まれる分野として、第2波第3波を見据えたPCR検査体制の充実と病床確保の問題があります。検査体制については、希望する区民が検査を受けることが可能にならなければ不安の払拭はできませんし、検査結果に対応するために適切な医療にすぐに繋がれる体制を作っておくことが求められます。今後の体制整備についてお聞きします。

【答弁・宮崎副区長】

区では、区内医療機関による帰国者・接触者外来や保健所での検体採取に加え、本年4月以降、区内医師会の協力をいただき地域外来・検査センターとドライブスルー方式による検査センターが開設され、PCR検査体制の拡充を図ってまいりました。

一方、国の緊急事態宣言が解除され、東京都の休業要請緩和がステップ2に移行する中、東京アラートが発出されるなど新型コロナウイルスの感染状況は日々予断を許さない状況にあり、感染の再拡大を想定し、PCR検査体制の維持・拡充と感染者に対応した病床の確保等は喫緊の課題として認識している。

 現在、区内医師会と新型コロナウイルス患者の治療にあたる病院との定期的な情報連絡会を開催しており、検査体制の展望や病床確保による経営課題への対応等について、各医療機関からいただきました率直なご意見をもとに、具体的に病院経営支援について着手する。

 区としては、医師会や医療機関と緊密に連携しながら、今般示された濃厚接触者へのPCR検査の実施や新たに唾液検査を活用した検査の導入などの拡充を図るとともに、区民の健康を守り、区民生活を安心して過ごしていただけるように取り組んでいく。

  1. 今回のPCR検査では、相談窓口の電話がつながりにくかったことや検査体制の遅れなどの問題が起きました。これはかつて区内に4つの保健所と1つの保健相談所をおく体制を縮小再編してきた現在の保健所行政の脆弱性さが露呈したものではないでしょうか。改めて防疫・感染症対策、公衆衛生、公衆保健の事業強化に向けた体制の改善に取り組む必要があります。組織的には、総合支所健康づくり課と保健所の連携強化や新旧保健センターの有効活用などが考えられます。一刻の猶予も許されない課題です。迅速な計画の公表を求めます。見解をお聞きします。

【答弁・宮崎副区長】

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向け、区はこの間、世田谷保健所の体制を順次強化しながら、取り組みを進めてきた。

 相談体制については、一般的な相談窓口と世田谷区帰国者・接触者電話相談センターを設置し、回線を増やして対応してきた。また、PCR検査体制についても、保健所に加え、世田谷区医師会と玉川医師会の協力のもとで検査体制を強化し、迅速な検査の実施につなげてきた。

 この間、コロナ感染症への対応において、医師や保健師などの専門人材による迅速かつ連携した取り組みの重要性を痛感している。

 今後懸念される感染第2波第3波に備え、まずは今夏を目途に、有事の際に専門人材が迅速かつ機動的に対応可能な組織体制の構築に早急に取り組んでいく。

 その上で、今般の対応の教訓を活かし、地域の実情に即した感染予防や普及啓発、国や都および専門機関や医療機関との円滑な連携調整、感染経路の追跡等調査の迅速化などの視点から、今後の保健所組織のあり方について検討する必要があると考えており、専門人材の確保・育成なども含め。引き続き検討していく。なるべく早く予算を充当していく。

  1. 今回の緊急事態に対しては、保健所への応援体制や交流推進部全体を給付担当に移行するなどコロナ感染防止体制を取りつつ、職員は本来業務も継続させています。昨年の水害対応で指摘したように、非常事態に対応するには職員の業務体制には課題があります。災害時や今回のような事態ではどのようなところに手厚い職員配置が必要となったのかを改めて検証することや会計年度任用職員の処遇改善などが必要です。非正規雇用で穴埋めし依存する組織体制をこのまま続けていくのか、という問題も明らかになったのではないでしょうか。今後の職員体制への考えをお聞きします。

【答弁・宮崎副区長】

 区では、行政経営改革の視点に立ち、民間活用はもとより、補助的業務や専門的業務に関しては、会計年度任用職員を活用する一方、重点政策には積極的に常勤職員を充てるなど、メリハリのある人員配置を行うことにより計画的に職員数の適正管理を進めてきた。

 また、一方で、今般の新型コロナウイルス感染症対策等の緊急課題については、限られた人員を最大限活用すべく、組織の垣根を超えた全庁的な応援体制を組み柔軟に対応しているところである。

 これまでの職員体制は、行政需要の一層の複雑多様化や量的な増加等の変化に対応しながら安定的に区民サービスを提供することを中心に構築してきたが、今後はコロナ禍や大震災発生時に対応できる体制とする必要がある。

 引き続き事務事業の見直しを進めるとともに、各業務に必要な人員を見極めながら、常勤職員と会計年度任用職員の役割分担を踏まえた、非常時にも責任を持って対応、区民と向きあえる効率的・効果的で柔軟性のある職員体制を構築していく。

  1. 3密を避けるコロナ感染対策によって、地域で継続してきた市民活動が停滞しています。区民参加と協働を掲げる世田谷区として、区民の活動の停滞とそれに伴い人との繋がりが断たれる状況は、住民自治にも多大な影響を与え、今後の地域行政制度のあり方も例外ではありません。NPOを含む市民活動や町会自治会への支援が、区民参加と協働の推進のために必要です。区の見解をお聞きします。

【答弁・岡田副区長】

 地区においては、町会・自治会や身近なまちづくり推進協議会、民生・児童委員などの地域団体、そして子育て、環境、教育など様々な目的を持って活動しているNPOなどが多彩な活動を繰り広げられており、こうしたボランタリーな活動が、地域の安全・安心などの課題に対応し、世田谷の生活の豊かさを支えていただいていると認識している。

 しかしながら、今般の新型コロナウイルス感染拡大に伴い、こうした様々な地域活動、そして企画されていたイベントが縮小、停止する事態となっており、地区まちづくりの停滞につながることが危惧されている。新型コロナウイルスに対応した「新しい生活様式」のなかでも地域活動、まちづくりを支える活動が衰えることがないよう、活動環境の整備など、行政の支援が重要と考えており、現在、進めている地域行政の検討においても重要な視点になると考えている。

 緊急事態宣言が解除され、現在、地域活動の場である公共施設の再開に向けた準備を進めている。施設管理者として、感染予防対策にできる限りの対応をするとともに、活動団体の皆さんが安心して活動できるように「新しい生活様式における施設利用のガイドライン」を作成した。これを各施設やまちづくりセンター、総合支所等において、活動団体の皆さんに周知、共有し、皆さんとともに困難な状況下で活発で豊かな活動ができるよう、まちづくりのパートナーとして、区民とともに考え、必要な支援をしていく。

2.誰もが暮らし続けられる福祉都市世田谷をめざして

コロナ感染拡大の防止のために人との接触を可能な限り少なくする3密を避けようにも避けられないのが介護の現場です。日々の暮らしを支え命をつなぐことに貢献する介護現場では、早くから感染への警戒を強め、対策を講じていました。医療現場への支援と同様に、介護現場への支援もさらに進める必要があります。

  1. 今後予想される感染拡大の第2波第3波を視野に入れ、介護現場に責任を委ねるのではなく、感染症拡大時の対応について区の考え方を明確にしマニュアルを示すこと、またオンラインなどを活用した感染防止のための研修の実施などを求めます。区の今後の対応についてお聞きします。

【答弁・高齢副支部長】

 区では、介護施設・事業所に対して、ホームページやFAX等を活用し、国、東京都、区の感染症拡大防止に関する情報の提供に努めてきた。

 この間、国からは「社会福祉施設等における感染拡大防止のための留意点」として、「入所施設・居住系サービス」、「通所・短期入所等のサービス」、「居宅を訪問して行うサービス」別の具体的内容のマニュアルが示されており、訪問介護職員向けには、動画の配信なども行われている。また、国では今後、学識経験者、介護現場の意見を踏まえ感染対策の新たなマニュアルの作成を予定している。

 区にも事業所から感染防止に関する意見や要望が届いており、こうした声を受け止め、今回ご提案する補正予算案の中で感染防護用品の購入・備蓄のための支援金を計上している。また、専門家による感染症防止対策の動画研修を実施していく。区のマニュアルについては、国の新たなマニュアル作成の動向を注視し、区の動画研修の内容等も検討していく。

  1. また、経済的にも厳しい状況にあるのが、障害者や障害児の通所施設です。収入が減ったとしても支援金の給付対象にならない場合もあり、今後の事業継続への支援は大きな課題です。誰もが自分らしく生きるためにも障害者、障害児の施設は不可欠です。区の支援の取り組みについてお聞きします。

【答弁・障害福祉部長】

 障害者・児の通所施設では、新型コロナウイルス感染症による緊急事態措置も、通所自粛や施設内の感染予防策の徹底、支援体制の縮小等を実施し、通所サービスに相談援助や在宅支援を組み合わせた運営のお願いを行ってきた。

 区は、3月以降、複数回電話やメール等により各施設の運営状況や課題等を把握し、国や都からの情報の提供や相談対応、マスクや消毒液などの必要な物資の提供支援等を行ってまいりました。さらに喫緊の対策として、感染防護物品の購入等に対して、全ての施設に10万円上限を補正予算に計上している。

 また、直近では、感染リスクへの不安や職員のメンタルヘルス、サービス報酬の減収などの施設運営上の不安が寄せられており、区として施設に寄り添った支援を行っていく必要があると認識している。

 今後、施設が安定的に運営され、障害者・児の通所場所が引き続き確保されるよう、意見聴取や運営状況、給付費の推移等の把握を行ったうえで、国や都への要望等を含め、各施設の状況等に応じた支援を早い段階で行っていく。

3.学校教育のあり方と子どもが育つ環境について

2月28日、突然要請された学校休業で約3ヶ月間、子どもたちは大切な教育の機会を失いました。6月1日からは分散登校に入り、子どもたちが学校に戻ってきました。学習の遅れを取り戻す対応が迫られますが、その際、学校行事を極端に中止するなど、学習の遅れを取り戻すためだけの授業にしないことを求めます。

新しい学習指導要領ではアクティブラーニングを重点とし、子どもが主体的、対話的に学ぶ授業の大切さを掲げています。例えば、障害がある子どももない子どもも同じ教室で一緒に学ぶことで、互いの違いを認め合いながら様々な経験を通し成長します。外出自粛によって子どもが一人一人切り離されず、集団の中で学習し成長することを保障と同時に、インクルーシブな環境づくりも大切です。

  1. ICT教育の推進が期待されていますが、オンライン学習は教育活動を支える一つの道具と捉え、オンライン学習そのものを目的としないこと、また、家庭環境により教育の格差が生じないよう十分な配慮を行うことを求めます。今後の世田谷区の公教育環境をどのように構築していくのか、教育委員会の考えをお聞きします。

【答弁・教育長】

学校教育の基本は、教科による学習や様々な活動を通じて、集団の中で共に学び合い、多様性を尊重しあう、インクルーシブな視点を大切にすることであると認識している。

 学校再開後は、学習面に取り組みを進めていくとともに、学校行事の意義をふまえ、バランスよく子どもたちの学びを保障していく必要があると考えている。

 教育委員会では、学校におけるICT環境の整備に取り組んでいるが、学習におけるインターネット環境の整備は、障害のある子どもの学習のサポート機能や、それぞれの状況に応じた学習支援、不登校の子どもへの学習機会の提供など、様々な可能性を秘めているものと考えている。

 家庭による通信環境の格差などの課題に配慮し、子どもたち一人ひとりを尊重し、様々な事情を抱えた子どもたちが、同じ場でともに学ぶことを支援するためのツールとしてICT環境も効果的に活用し、子どもたちにとってより豊かな学校生活が実現できるよう、支援していく。

  1.  4月から世田谷区児童相談所がスタートしました。都からのケースの移譲もスムーズに行われたと聞いています。外出自粛に伴い、子ども虐待の増加も心配されていますが、新たな体制に移ったこともあり、相談件数は昨年との比較は単純にすることはできないそうですが、楽観できる状況ではありません。

「STAY HOME」と言っても家の中が安心できる場所ではない子どもがいることをふまえ、改めて相談や保護体制の整備を考える必要があります。過度に密室化された状況でいかに虐待の発見と救済にのぞむのかが課題です。まずは、児童相談所、子ども家庭支援センター、DV相談、せたホッとなどがいかに連携をしていくかが鍵となります。また、学校、保育園、幼稚園など子ども関係の施設との連携も不可欠です。3密回避が継続されることを前提とした子ども虐待対策についてどのように対応をしていくのか、見解をお聞きします。

【答弁・子ども若者部】

 4月1日より世田谷区児童相談所の業務を順次開始したところだが、新型コロナ感染拡大の影響に伴い、虐待の早期発見・早期対応のために重要な学校、幼稚園、保育園、児童館等の見守りの目が届かない日々が続く中で、どのようにわずかな変化やSOSをくみとっていくのかが求められた。

 こうした中、各機関の協力のもと、子どもの生活状況の確認を行い、区の児童虐待通告ダイヤルを通じて児童相談所が情報を集約し、適切に関係所管と連携した支援につなげる体制をとるなど、工夫に努めてきた。

 このような状況下において、問題が深刻化する前に、自ら相談やSOSを発信できるようにすることが重要であると改めて認識した。全ての人には暴力や虐待を恐れることなく生活し、相談する権利があることを、特に声をあげにくい女性や子どもに知っていただき、迷うことなく相談できるために、関係機関とも連携しながら周知・啓発を進めていく。

 この度の状況をふまえ、様々な事態においても、早期発見・早期対応に向け関係機関の連携を再確認し、児童虐待対策の業務体制の維持が図られるよう取り組んでいく。

  1. 昨年公表された「世田谷区子どもの生活実態調査」では、保護者が共働きの家庭であっても生活困窮ギリギリの家庭が多いことを示し、世田谷区も子どもの貧困とは無縁ではないことがわかりました。経済の停滞により子どもの貧困も深刻になることが予想されます。子どもの貧困問題では、夏休み明けに体重が減少している子どもの存在が伝えられていますが、給食が1日の食事の中心という子どもが存在すること、また、家庭に居場所がない場合、学校が安心する場所という子どももいます。また、貧困とは様々な機会を子どもに与えることを困難にすることにも注目するべきです。例えば、学校図書室の存在は子どもへ本を通じて知識を与えますが、学校が休業することで困窮状態にある子どもから広い知識を得るチャンスも奪うことにもつながります。

今後、第2波第3派に備え、子どもの貧困対策として食、学習支援、居場所支援などへの対応を考えておく必要があります。教育委員会の見解をお聞きします。

【答弁・教育総務部長】

 教育委員会では、子どもの貧困対策の推進にあたって、食・学習・居場所等で課題を抱える子どもたちへの支援を充実させることが、重要であると認識している。また、学校臨時休業期間中を含むこの間の社会状況の影響も、大変大きなものであると考える。

 子どもたちの食と暮らしの支援としては、3月の臨時休業中には子ども・若者部の協力を得て、「子ども配食事業」を臨時的に拡大して対応した。その後も「子ども配食事業」の周知に努めている。また、就学援助認定となった世帯に対して、4月以降の給食停止期間の給食費相当額を支給する。

 学校休業中には、生活面、健康面、学習面などで支援や配慮を必要とする子どももいることを常に考え、学校から子どもたちの生活の様子や、健康状態、学習の取り組みなどを電話などにより聞き取るなど対応してきた。

 6月1日から分散登校を開始しているが、引き続き福祉的支援の必要性が懸念される場合には、児童相談所や子ども家庭支援センター等と必要な支援について情報共有を行うこととしており、あわせて食の支援についても情報共有するなど、関係所管とも連携していく。

4.ジェンダー平等の社会をめざして

毎年公表される国の男女平等を表すジェンダーギャップ指数で日本は121位、過去最低となりました。コロナ対策でも、ジェンダーによる格差が解消されていない日本社会の実態を明らかにしました。

特別定額給付金の申請や振り込み口座が世帯主に限られていることが問題視されました。世帯主と別居中や身を隠すDV被害者、ネットカフェの住人やホームレスなど決まった住所がない人々、虐待を受け施設で暮らす子どもなどへの給付に課題がありました。特別な措置が取られたものもありますが、例えば加害者と同居するDV被害者は給付金を受け取ることは難しいなど、全ての対象者が給付金を受け取るためには課題は残されたままです。

憲法で「個人の尊重」が謳われているにも関わらず、行政サービスの多くが世帯主中心になっています。国勢調査によると「夫婦のみ」「夫婦と子ども」の世帯は98%以上が男性が世帯主です。ジェンダーギャップの典型的な例の一つです。

予算特別委員会では、外出自粛生活によってDVや子ども虐待のリスクが高まることを指摘しました。4月には国連からDV、子ども虐待の増加の懸念が発信され、各国も対応を強化、日本もDV相談事業を拡充、相談数は例年の1.3倍です。もともとDVがあった関係がより一層深刻化していくケースに加え、経済不安が引き金になるケースもあります。また、特別定額給付金を世帯主が独り占めし渡さない経済的、精神的DVの相談も増えています。区は、DV被害の電話相談の拡充や区のHPの活用などの対応を取りました。

  1. 今後は、DV被害者も含め、従来の枠組みにはまらない人々、例えば18歳以上の子ども、子どもと一緒に逃げたい人、ペットを連れている人、LGBT、男性被害者、障害者、外国人など多様な背景を持つ人への支援に視点を拡げることと、より一層の相談事業などの拡充と体制強化を求めます。コロナ対応から見えた区のDV被害の現状認識とともに体制強化についてお聞きします。

【答弁・生活文化部長】

 区では平成30年12月配偶者暴力相談支援センター機能を整備し、DV被害者の相談体制の整備と安全確保や生活再建に向けた支援に取り組んでおり、昨年度は512人の相談支援を行っている。

 また、新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う外出自粛やDV相談が増加傾向にあること踏まえ、男女共同参画センター「らぷらす」では5月より、「女性のための悩みごと・DV相談」を拡充実施した。

 相談内容は、様々ある。今般の特別定額給付金申請において、経済的に自立できず避難できない、避難したものの行政の支援を受けておらず厳しい生活が続いているなどの相談があり、DV被害者の深刻な状況が明らかになっている。

 DV被害者の支援においては、個々の状況を踏まえたきめ細やかな対応が必要であり、引き続き保健福祉センターなど関係所管による連携会議などで情報交換を行いながら、相談から自立した地域生活に着実に進めるよう、支援体制の強化について検討する。

  1. 経済的な困窮の広がり、DVなどの密接な関係における暴力の増加、自粛生活によるうつ状態など様々な要因で心の健康、バランスを崩す人が多くなることが予想され、自殺対策なども視野に入れた対策の必要性が高まります。悲しみや喪失感に寄り添うグリーフサポート事業などの強化や、子どもの心のケアを進めるための学校現場への支援などを各所管が連携して精神衛生にとどまらない心のケア体制をつくることを求めます。区の考えをお聞きします。

【答弁・世田谷保健所】

 今般の新型コロナウイルス感染拡大や外出自粛、失業などで抱く不安やストレス、家族を失った悲しみなどが報道等で伝えられる中、区は、区民のこころの健康を保つための総合的な支援が必要であるものと認識している。

 区ではこれまで、こころの健康相談に加え、医療、法律、警察・消防や就労支援等の学識経験者等との協議を重ね、思春期世代の相談、死別等の悲しみに寄り添うグリーフサポートなど、様々な相談支援に取り組んできた。

 また、昨年度策定した「世田谷区自殺対策基本方針」では、区の全窓口が区民の抱える問題にいち早く気づき適正な支援に繋ぐことを掲げている。

 今後、これら相談窓口での新型コロナウイルス関連の相談状況等を把握し検証する。その上で、家庭状況の変化に敏感な子どもの心のケア等も念頭に、第2、第3波に備え必要な区民のこころの健康への総合的な支援について、学識経験者等の意見も伺いながら、子ども・若者部、教育委員会とも連携して検討する。

  1. 感染症対策を視野に入れた災害対策を
    1. 今後の水害、地震の災害対策には、感染症拡大防止は欠かせなくなりました。例えば、避難者が密集することを避けられるように避難所の数を増やすことや避難所となる学校では避難場所を教室に拡げることは着手していると聞いています。避難所では床に直に寝ることが当たり前になっていますが、感染症拡大につながるという指摘があり、回避する策として段ボールベッドの活用が注目されています。他自治体では企業などと災害時優先供給協定を結ぶ動きが拡がっているそうです。世田谷区でも検討が必要です。今後、感染症対策を視野に入れた避難所運営マニュアルの策定と地域の防災リーダーなどへのマニュアルの徹底をすることが課題です。防災訓練が軒並み中止となっている現状を踏まえ、地域の災害対策の維持への対応が急がれます。また、災害が起きた際に、感染症対応を前提としたボランティアの受入れ体制の構築など課題は山積です。見解をお聞きします。

【答弁・危機管理室(避難所における感染症対策について)】

 区では、出水期を迎えるにあたり、風水害時の避難所における新型コロナウイルス感染防止対策を進めるため、緊急対応方針を取りまとめた。

 新たに都立高校や区内大学に対して、避難所として活用できるよう協議を進め、避難所の拡充を行うとともに、既存の避難所でも体育館以外の教室等も最大限活用するなど、避難スペースの確保を図っていく。

 あわせて、避難所の受付でマスクの着用を促すことや、受付や手洗い場などに手指消毒液や石けんなどの衛生用物品を配置することなど、避難所運営における感染症対策の徹底を図っていく。

 このような方針に基づく対策については、避難所における新型コロナウイルス感染症対策に関する留意事項として早急に取りまとめ、その内容を避難所運営組織の皆様に各総合支所を通じて丁寧に周知していく。

 また、段ボールベッドについては、避難所開設当初から配備する場合、更なる避難スペースや保管場所の確保、設営作業に時間を要すること、担い手となる避難所運営組織への理解などの課題が多くあるが、避難所でのプライバシーや生活の質の確保などの観点から、その活用について検討していく。

【答弁・烏山総合支所(防災訓練が中止になり、地域の災害対策をどう維持するのか)】

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、例年行われている防災訓練等が中止となっており、区民の防災意識の希薄化や資機材の操作スキルの低下、さらに感染症対策を講じた新たな避難所運営などが課題となっている。

 このため、現在総合支所では、「3密」の回避など、感染症対策を徹底した上で防災訓練等を開催することや、その際の具体的な訓練内容を検討しているほか、避難所の感染防止対策を踏まえ、各避難所の実情に即した運営について検討を進めている。

 また、地域の防災活動を担う町会・自治会等をはじめ、区民の方々の防災意識等が低下することのないよう、ホームページやツイッター、啓発広報紙等をより効果的に活用するとともに、町会長会議等の機会も活用し、今後も町会・自治会などにきめ細やかな啓発活動を行っていく。

 区としては、新型コロナウイルス感染症の影響下においても、自助・共助の理念に基づき、区民が災害発生時に適切な行動がとれるよう、創意工夫して地域の災害対策に取り組んでいく。

【答弁・保健福祉部(ボランティアの受け入れについて)】

 災害時のボランティア活動に際して、感染症予防のため全国からボランティア受け入れが困難となる一方、ボランティアと被災者の両者の安全を守るため、感染症対策を講じた受け入れ体制の整備は喫緊の課題であると認識している。

 区は、災害時にボランティアを円滑に受け入れるために、平成29年度から世田谷ボランティア協会において「災害時ボランティア受け入れ体制整備事業」を実施しており、ボランティアのマッチングを行うボランティアコーディネーターの養成、区民や町会・自治会等をはじめとする避難所運営組織へのボランティア受け入れ体制の理解促進に向けた取り組みを行っている。

 今後、ボランティア受け入れの中心となる世田谷ボランティア協会、世田谷区社会福祉協議会等とも連携して、ボランティアへの検温等の健康状態の確認、マスク・消毒液について自衛手段のためボランティアに持参してもらうことの周知とマッチングセンター等での準備等、安全対策について検討していく。

6.環境都市世田谷をめざして

外出自粛生活での経験をもとに、高校生たちが「過剰包装をやめてほしい」と声をあげています。一日中家にいる生活の中、お菓子などの容器包装がすぐに溜まってしまうことに気がついたそうです。環境問題として気がついた高校生たちが企業の責任として容器包装の見直しを求めました。実際、3月以降世田谷区のゴミ量は、前年比で平均15%も増加しました。

環境問題を考えるとき、私たちは自分たちの行動変容を中心に考えがちです。レジ袋を有料化しエコバックを使用する、リサイクルのためにペットボトルの自治体回収を行う、水筒を持参する。消費者が自己責任として取り組むものが多いと感じます。SDGsの目標12は、「つくる責任つかう責任」を掲げています。今後の環境政策には、高校生たちが指摘する企業の責任、生産者の責任を改めて問うことが必要です。

  1. 私たち会派は、海洋汚染に関連するマイクロプラスチック問題として校庭の人工芝化の見直しや熱帯雨林の濫伐に関連し公共事業の型枠材の国内産活用を求めています。また、区の校舎の木材使用は評価をしています。今後、気候変動非常事態宣言を行う際には、「つかう責任」消費者の行動変容に偏らず、「つくる責任」拡大生産者責任も問うことも重要です。見解をお聞きします。

【答弁・岡田副区長】

 地区においては、町会・自治会や身近なまちづくり推進協議会、民生・児童委員などの地域団体、そして子育て、環境、教育など様々な目的を持って活動しているNPOなどの活動団体が多彩な活動を繰り広げておられ、こうしたボランタリーな活動が、地域の安全・安心などの課題に対応し、世田谷の生活の豊かさを支えていただいているものと認識している。

 しかしながら、今般の新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、こうした様々な地域活動、そして企画されていたイベントが縮小、停止する事態となっており、地区まちづくりの停滞につながることが危惧される。新型コロナウイルスに対応した「新しい生活様式」の中でも地域活動、まちづくりを支える活動が衰えることがないよう、活動環境の整備など、行政の支援が重要と考えており、現在、進めている地域行政の検討においても重要な視点になると考えている。

 緊急事態宣言が解除され、現在、地域活動の場である公共施設の再開に向けた準備を進めている。施設管理者として、感染予防対策をできる限りするとともに、活動団体の皆さんが安心して活動できるよう、「新しい生活様式における施設利用のガイドライン」を作成した。これを各施設やまちづくりセンター、総合支所等において、活動団体の皆さんに周知、共有し、皆さんとともに困難な状況下でも活発で豊かな活動ができるよう、まちづくりのパートナーとして、区民とともに考え、必要な支援をしていく。

以上