議会質問と答弁

2022年第4回定例会代表質問

世田谷立憲民主党を代表して、質問いたします。

 

まず初めに、持続可能な区政運営に向けて伺います。

 

新型コロナウイルス感染症拡大への対応は三年目を迎え、世界経済の悪化や物価高により個人消費も停滞し、経済的な危機感が広がっています。繰り返される補正予算では、高騰するガソリン代や光熱費への支援策が盛り込まれるなど策が講じられてはいますが、経済的厳しさが増す一方で、好転する兆しは見られません。特に来年十月から始まるインボイス制度は、区内中小企業や自営業者、個人事業主などに影響を与え、場合によっては廃業も余儀なくされるのではないかという懸念が広がっています。

区は、インボイス制度の導入に対する影響調査を行い、支援策を模索することが必要なのではないでしょうか。区内中小企業への支援策を強めることと、中間層への支援を求めます。今後の経済支援に対する考えをお聞きします。

 

コロナ禍は、経済の脆弱性を顕在化させる引き金でしかありません。今の経済的に厳しい状況は、人口減少による市場縮小や人手不足などの課題への効果的な対応策が取られていなかったことが一因です。外出自粛を契機にサービス業を中心に失業者が出るなど、経済的に立ち行かなくなった人が増加し続けていることは、例えば住居確保給付金の申請、継続状況からも明らかです。区民の経済的危機は、区内経済の縮小につながることから、区内経済の活性化策は喫緊の課題です。  今年度、取り組まれている地域連携型ハンズオン事業SETA COLORは、区内企業の業態転換や新規の事業拡大などを直接支援するもので、特徴ある取組です。今後の成果に期待をしています。SETA COLORへの評価と今後の取組についてお聞きします。

 

さらに、公契約条例の活用についても検討が必要です。区独自の労働報酬下限額が東京都の最低賃金よりも高く設定されていることは、労働者の収入が上がるということのみならず、企業にとっては、時給を上げることによって労働者確保にも寄与するとの評価を得ています。また、公契約ではない地域産業でも時給などの賃金の底上げにもつながっているとも聞きます。

 

この間、労働報酬下限額を定めることによってどのような効果があったと区は考えているのか。また、現在千百七十円となっている労働報酬下限額の引上げを二〇二三年度も行うべきだと考えますが、区の見解をお聞きします。

 

私たち会派がこれまで一貫して反対をしてきた学校主事の外部委託の問題では、区政運営の姿勢が問われています。昨年、示された学校主事の外部委託の理由は、行政改革の視点であったことから、教育の領域に効率化、行革の視点を取り入れることが妥当なのかどうかを問いかけてきました。特に学校主事は、学校現場での例えば、子どもが急にいなくなってしまったときなど、臨機応変な対応が必要になることから、外部委託では、指揮命令系統の面から偽装請負につながるおそれがあることや、教育委員会も認めている小学校特有の業務もあり、外部委託にはなじまないことを指摘してきました。  しかし、今年度の検証もままならない中、来年度も一校に導入するとしています。これ以上取組を広げるべきではありません。区長の考えをお聞きします。

 

これまで子どもの権利に関わる政策については、普遍主義の立場に立ったものにすることを求めてきました。その立場から、子どもを対象とした医療費無償化についても、高校生世代まで広げる際も、所得制限のない制度にすることを提案しました。来年度から始まる所得制限を設けない高校生世代の医療費無償化を支持します。

 

そこで、改めて学校給食については、所得制限を設けない完全無償化を来年度から実現することを求めます。区長の考えをお聞きします。

 

インクルーシブな教育の実現を目指す世田谷の教育改革と課題についてお伺いします。

 

国連障害者権利委員会は、日本政府に対して、障害を理由に学ぶ学校やクラスを分ける分離教育から、障害のあるなしにかかわらず、共に学び共に育つインクルーシブ教育への転換を強く求め、インクルーシブ教育の実現への具体的なプランを示すことを勧告しました。例えば、フルインクルーシブ教育を実施しているイタリアでは、障害は社会の資源となり得るとし、障害のある子どもへの教育体制づくりを通し、教職員の専門性の強化など、全ての子どもの教育内容の充実を実現しています。

 

世田谷区では、真のインクルーシブ教育を目指すとし、教育総合センターをインクルーシブ教育の実現の拠点と位置づけるなど、取組を進める姿勢を示しています。改めて、国連の勧告をどのように反映するのか、教育長の決意をお聞きします。

 

決算特別委員会で教育委員会は、不登校特例校と既存の学校との違いをゆとりある教育プログラム、少人数学級、子ども主体の学校づくりと答えました。これは不登校の子どもたちが示した学校現場の改革を求める重要な内容と捉えています。特に子どもの意見を尊重する子ども主体の学校づくりは学校運営の基本とするべき、子どもの権利に関わるものではないでしょうか。

 

教育委員会は、決算特別委員会で不登校特例校の実践を生かすとしていますが、どのように取り組む考えなのかお聞きします。

 

四月にはクラス担任の教員が不足するなど、学校現場では教員不足は深刻な問題です。なぜ教員不足が生じているのか、原因を捉えた取組が必要です。

 

区は、二〇一九年に教員の働き方の実態調査を行い、教員が働きやすい環境づくりへの取組に対し期待されましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の対応策の前にうやむやにされた感があります。特にコロナ対応の影響によって、教員の働き方、多忙化に変化はないのか、現状の把握とともに、世田谷区独自のカリキュラムの検証なども行い、教員の多忙化を解消し、働きやすい環境を確保することで教員不足への対応策に取り組むべきです。見解をお聞きします。

 

憲法二十六条では、義務教育は無償であることが規定されています。しかしながら、学校給食費をはじめとして、家計からの支出による私的な経済的負担に頼っています。子どもの権利として、教育費の無償化が望まれます。

 

副教材などの私費負担の現状を把握し、学校教育の完全無償化に向けて検討することを求めます。区の見解をお聞きします。

 

昨日十一月二十七日、数々の問題が指摘され、反対の声も上がる中、英語スピーキングテストが実施されました。区教育委員会が英語スピーキングテストの実施に対する賛否の態度を表明できないことは理解します。しかし、子どもたちの高校受験に影響があることに対して何も言わずにいることも責任の放棄ではないかと考えます。例えば、受験会場の指定では、近くに会場があるにもかかわらず遠い場所を指定され、子どもに負担がかかる内容だったことから都教育委員会へ申入れをした学校があると聞いています。今回、実際にテストが実施されたことで分かった課題も多いのではないでしょうか。  

その聴取と検証を行い、課題と改善点などをまとめ、区教育委員会から都教育委員会へ意見として上げ、改善またはテストの見直しを求めるべきです。見解をお聞きします。

 

次に、子どもの権利に沿った子ども政策の推進について伺います。

 

現在、子ども政策の総合的な視点を示す子どもグランドビジョンの策定中です。そこで示されている区立幼稚園の統合問題は、大きく子ども政策を変えることにつながると考えています。統合対象になっている幼稚園がある地域では、保護者の反対や懸念の声が大きく、区は丁寧な説明をするということですが、そもそも子どもグランドビジョンを示すまでの議論が十分ではなく、答えありきであるとすれば、到底理解が得られるとは思えません。子どもグランドビジョンが目指すこれからの子ども政策を共有した上で、現在ある幼稚園など含めた子ども施設がどのような役割を担っていくのかという、その視点で考えられるべきではないでしょうか。

 

現状での議論を強硬に進めることは、認められません。見直し、または立ち止まることが必要と考えますが、見解をお聞きします。

 

昨年八月に生活困窮世帯の中学生への支援策としてまいぷれいすがスタートし、一年余りたちました。この間、報告も受けましたが、児童相談所の一時保護から家庭へ戻った子どもにとって家以外の安心できる居場所となっていることや、一年かけて子どもの様子に変化が見られていること、地域のボランティアにも支えられている様子がうかがえます。

 

今後、考えなくてはならないのは、義務教育以降の高校生世代への支援です。子どもの時期に自分の人生のモデルとなる先輩や大人に出会うことは、子どものその後の生き方にとって意味のあることと思います。支援策が圧倒的に乏しい高校生世代への支援が切れ目なく続けられるよう施策展開を求めます。見解をお聞きします。

 

また、子どもの権利を保障するためには、意見表明権の保障が重要です。不登校特例校での子ども主体の学校づくりにも見られるように、子どもの意見を大切に扱うことは、子ども本来の力を伸ばし、守ることにつながります。教育政策も含む子ども政策における子どもの意見表明権の保障について、区の考えをお聞きします。

 

次に、地域共生社会を目指す福祉政策について伺います。

 

国連障害者権利委員会からの九十一もの勧告を受けたにもかかわらず、残念なことに、日本政府は勧告に対して真摯な態度を示していません。

 

一方で、世田谷区は国連の勧告を受け、第三回区議会定例会において、私たちのことを私たち抜きで決めないでという言葉を引用し、地域共生社会の実現とインクルーシブ教育の実現への決意を区長が示しました。同定例会で、障害理解の促進と地域共生社会の実現をめざす条例が制定されたことも意義深いことと感じます。これから策定に着手するノーマライゼーションプランでは、徹底した当事者参加の保障が重要な視点であると考えます。国連障害者権利委員会は、十八人中十七人の障害当事者で構成されており、中には知的障害者も委員として職責を果たしています。

 

国連の勧告を受け止めるとするならば、世田谷区の当事者参加をいかに発展させるのかが問われると考えます。区の見解をお聞きします。

 

障害者の地域における自立生活では、災害時の対応も重要な視点です。個別支援計画の策定においては、地域のまちづくりセンター、あんすこ、障害部門のケースワーカー、担当の相談支援専門員の連携などが重要な役割を果たすものと考えますが、地域の理解はいまだ進んでいません。どのように取り組む考えかお聞きします。

 

世田谷区は高齢化率が二〇%を超え、ひとり暮らし、高齢者のみ世帯が著しい増加の一途をたどっています。このことから、年齢を重ねても住み慣れた場所、自宅で生活することを支える政策の強化がさらに望まれます。コロナの影響で外出がままならないなど、高齢者の生活全般に変化が見られることから、制度から考えるのではなく、暮らしから考える政策が求められています。

 

日常生活支援総合事業の総括を区はどのように考え、今後の政策に生かしていくのかお聞きします。

 

次に、男女共同参画政策の推進について伺います。

 

第三回定例会では、刑法の性犯罪規定の改正を求める意見書を世田谷区議会から国へ上げました。性暴力、性犯罪の被害に遭うことの人生への影響は計り知れません。性暴力、性犯罪の被害者への無理解が社会に根強いために、勇気を持って告発した被害者がバッシングを受けることがあるように、性暴力、性犯罪がいまだ理解されているとは言い難い現状です。むしろ被害者側に被害に遭う理由を見つける傾向にあることから、告発につながりにくい犯罪になっています。

 

世田谷区では、昨年、犯罪被害者相談窓口を設置し、性暴力被害者への支援にも取り組んでいます。性暴力被害者の支援では、被害者の気持ちに寄り添うことが必要です。加害者の傾向で言えば、見知らぬ人よりも知っている人が加害者であることが多く、被害に遭った直後、すぐに支援を求めることは難しいケースも多いのが現状です。女性の自殺が増加していますが、自殺につながるような生きづらさの中には性暴力被害が影響している場合もあり、様々な相談事の背景に性暴力被害からの影響が潜んでいるケースも少なくありません。

 

このことから、相談を受ける担当者が性暴力被害が及ぼす影響や対応、暴力の構造などを理解することが大切です。徹底した研修が求められます。併せて、性別にかかわらず相談が受けられるように相談者の育成を行うことも重要です。性暴力被害者支援に対する区の取組について伺います。

 

次に、多文化共生社会の実現に向けて伺います。

 

多文化共生の推進を目指し、条例が制定されて来年度で六年目となります。さらなる多文化共生施策の推進が求められます。今年二月、ロシア連邦によるウクライナへの軍事侵攻が始まり、母国から逃れてきた人々が避難民として世田谷区にも暮らしています。ウクライナの方だけではなく、ほかの国からも祖国を追われて日本へ入国してきたなど、事情を抱えていらっしゃる方に対するワンストップの相談、支援が求められます。区の取組をお聞きします。

 

次に、緑を増やし、気候変動対策を進める持続可能な環境政策について伺います。

 

十月十六日、世田谷区制九十年の式典が行われました。区は、十年後の区制百年にみどり率三三%を目指していますが、みどり率は年々減る一方です。

 

地球温暖化や都市のヒートアイランド現象の問題では、緑が持つCO2吸収源や気温低減の効果が期待されていることから、みどり率の減少をいかに食い止めるかが問われます。例えば、緑の保全と創出が期待できる土地の購入などを積極的に行い、公園や農地などの広い面積の緑化によって、温室効果ガスの削減、ヒートアイランド現象への取組など、脱炭素の取組の一助を担うべきです。

 

北烏山七丁目の緑地の公園計画では、脱炭素を意識し、自転車が安全で走りやすいクリーンな移動手段を推進するモデルとするなど、気候変動対策の視点を持ったまちづくり政策を求めます。見解をお聞きします。  

次に、平和政策の推進についてです。

 

世田谷公園に設置されたせたがや未来の平和館は、過去の戦争だけではなく、現代の紛争も展示に加え、展示内容のブラッシュアップによって来館者が増加していると聞いています。

 

平和政策としては、沖縄等への子どもの派遣なども求めてきましたが、さらに、暴力によらない平和的な問題解決を知ることなど、平和学の視点に立った平和の創造に対する見識を深めることを求めます。学校現場のみならず、区民への取組として広げていくことが大切ですが、区の見解を求めます。

 

最後に、来期の区政について伺います。

 

来年五月に区長や区議会議員の任期は改選となります。今期はコロナ対策に翻弄された任期とも考えられますが、まだまだ区政では取組を進めていかなくてはならないことが山積みです。

 

区政に対する来期に向けた保坂展人区長の決意をお聞きいたします。

 

以上で壇上からの質問を終わります。

 

【保坂 区長】

 

桜井議員にお答えをいたします。

 

まず、小学校への学校主事の外部委託問題について御質問がございました。

 

学校が子どもたちにとって通いたくなるような魅力あるものとするためには、校長が明確なビジョンの下でリーダーシップを発揮し、教職員だけではなく、学校で働く全ての人たちが力を合わせ、保護者、地域の高校、大学や民間企業など、地域に根差した力を活用して質の高い教育をしていくことがますます重要であると認識しています。

 

学校主事業務を民間委託した学校においても、この業務の従事者が子どもの教育を支える学校のチームの一員となるよう努めていると伺っておりますが、引き続き教育委員会において、令和四年、五年度の委託校に対して、学校関係者、児童、保護者など、多くの方からの評価、検証を実施してまいります。

 

このような認識の下、令和六年度以降の学校主事業務については、教育委員会における検証結果を踏まえ、客観的かつ子どもの安全や様々な学びを保障する視点から、今後の方針について判断していきたいと考えております。

 

次に、学校給食の無償化について御質問がございました。

 

給食費の無償化については、これまで他会派にも答弁いたしましたとおり、子ども・子育て応援都市にふさわしい施策として来年度に何らかの方法で実現するように検討しておりまして、具体的な内容については、今後の予算編成の中で判断を示すこととしております。既に所得に応じた無償化は実現しております。所得制限を課さない形での実施について、どのように具体的に実施をするのかの検討を現在しているところです。

 

この検討に当たって、現在のエネルギー価格・物価高騰による大きな影響を受けている区民生活を下支えするという視点から、保護者負担の軽減を図ることを配慮するとともに、議員お話しの子どもの権利の保障という視点も含め、検討を進めていきたいと考えております。

 

最後に、来期について区長がどのように考えているのかという私自身の今後についての御質問がございました。  私にとって三期目の任期、この相当期間は新型コロナウイルス感染症対策に費やすことになり、この対策は今も継続をしておりますが、区民の命と健康を守るという役割は、何はさておいても最優先で取り組むべき課題として、これは当然のことだったと思います。

 

他方、他の政策展開にはやはり大きな影響がありました。来年の春以降もバランスを持って喫緊の区政改革に全力で取り組んでいくために、私自身、区長として重責を果たしていく決意でございます。

【中村 副区長】

 

私からは、三点御答弁いたします。

 

まず、子どもの意見表明権についてです。

 

子どもの権利条約では、命が守られて育つこと、最善の利益が優先されること、意見が尊重されること、差別のないことという四つの一般原則が掲げられており、来年四月に施行されるこども基本法にも引き継がれています。

 

こうした子どもの権利保障は、区が子ども政策を進めるに当たって基本理念となるものです。子どもの権利を保障するためには、子どもが自身に関係のある事柄について自由に意見を表明することができ、大人が子どもを単に保護の対象にとどまらず、権利の主体として認め、障害の有無にかかわらず、子ども一人一人の意見を尊重し、十分考慮することは大変重要であると認識しております。

 

先日の子どもと若者が参加したシンポジウムやワークショップでも、日常的に安心して意見が言える環境づくりや、子どもが意見を形成し、表明することを支える大人の必要性などの御意見をいただいているところです。

 

引き続き、子ども・子育て会議の子どもの権利部会において、教育も含めた子どもの社会参加や意見表明など、子どもの権利保障について具体的に議論を重ねてまいります。

 

次に、障害者施策の当事者参加についてです。

 

私たちのことを私たち抜きで決めないでという当事者参加の考えは、障害者権利条約の重要な概念です。このことに基づき、条約では、当事者の参加に関し、法令や政策の策定、障害者に関する問題の検討に係る意思決定の過程において、障害者との緊密な協議や積極的な関与の必要性について定めています。

 

区でも、障害に関する協議会や団体との連絡協議会などにおいて、当事者の方を含め御意見をいただいておりますが、条例の制定や国連の勧告などを踏まえ、当事者の意見を聞く取組をさらに進める必要があると考えております。まずは次期せたがやノーマライゼーションプランに関する検討の場やシンポジウムなどで障害当事者の参加を試行的に進められるよう検討するとともに、今後、区の計画や施策に対しても当事者の参加が進むよう、課題等を整理しながら検討をしてまいります。

 

次に、個別避難計画についてです。

 

区では、避難行動要支援者の個別避難計画について、今年度、玉川・砧地域の浸水想定区域内にお住まいの方の作成を優先的に行っており、令和五年度、六年度で区内全域の避難行動要支援者の計画策定に取り組む予定です。計画策定に当たっては、災害時の安否確認や避難生活も想定しながら、できる限り実際に即した準備が大切です。玉川・砧地域では、エリア自立支援協議会で障害者の災害対策への理解促進の取組を進めるなど、地域、地区で連携を図り、取組を進めております。

 

今後、相談支援機関や福祉専門職、地域で自立生活をしている障害者が在宅避難や避難先、避難時の支援者などに関する理解を深め、災害時に個別避難計画を活用できるよう、総合支所などの関係所管と協力、連携して検討をしてまいります。

 

以上です。

【渡部 教育長】  

インクルーシブ教育の実現を目指す教育改革と課題について御答弁申し上げます。

 

障害のある全ての児童が合理的配慮を受けられること、そのために十分なリソースを確保し、質の高いインクルーシブ教育の実現に向けて国を挙げて計画し、動くこと、これは今年度九月に行われた国連の障害者権利委員会による審査を受けた国連の勧告です。教育の制度そのものに関わる変革を意味し、国としての対応が必要ですが、一朝一夕にできるものではないと認識しています。しかし、子どもたちは日一日と成長することから、世田谷区としては、できることから着実に一歩ずつでも前へ進めていきたいと考えます。

 

質の高いインクルーシブ教育の実現のためには、障害に知識と理解を持ち、一人一人に寄り添える教員の存在と、合理的配慮が受けられる学校の体制が必要となることから、現在、内容や方向性を吟味しながら、インクルーシブ教育のガイドラインを作成しています。様々な改革や改正には当事者の意見を聞くことが重要であることから、障害のある子どもたちや保護者の方の声や専門家の意見などを反映しながら作成してまいります。

 

全ての子どもたちが安心して過ごせるよう、共に学び共に育つ環境の実現を目指し、各学校が従来の枠組みにとらわれず、差別を生まない環境となるよう全力で取り組んでまいります。</>  

以上でございます。

【加賀谷 政策経営部長】  

私からは、インボイス制度の導入に対する影響調査、それから今後の支援について御答弁いたします。

 

インボイス制度につきましては、区におきまして、税務署の依頼を受け、「区のおしらせ」や区ホームページに説明会の日程を掲載するなど、制度周知に努めているところでございます。しかしながら、制度開始で大きな影響を受ける、これまで消費税の免税事業者であった中小事業者を中心に、インボイス制度そのものを知らない、また、いまだ制度理解が進んでいないとの指摘もあり、より一層の周知と現状把握が必要と考えております。

 

国では現在、来年度の税制改正におきまして激変緩和措置を検討しているといった報道もございますが、区として早急に事業者団体などに聞き取りを行い、インボイス制度への理解、困難な点、不安な点などについて、区内事業者の状況をまとめ、区長会等を通じて国に声を届けてまいりたいと考えております。

 

また、インボイスの状況把握の中で、物価高騰など厳しい状態に置かれている区内事業者の状況についても浮かび上がってくるものと思われます。区内事業者などの経営支援につきましては、こうした観点も踏まえ、引き続き来年度予算編成の中で検討してまいります。

 

以上です。

【後藤 経済産業部長】  

SETA COLORの評価と今後の取組について御答弁申し上げます。

 

コロナ禍の影響により、在宅消費やオンライン需要の拡大など経済環境そのものが大きく変化したことから、多くの事業者は、事業の再構築や販路拡大、新商品の開発が必要となってございます。

 

お話しのありましたSETA COLORは、これらの取組に対し専門家による伴走型の支援を行うもので、令和三年度には三十事業者を、四年度は約百事業者を支援してございます。

 

支援した事業者からは、赤字状態から抜け出し、経営が軌道に乗ったという報告もいただいているところでございます。引き続き事業者へのヒアリング調査を実施しまして、売上げ回復等の状況を把握し、本支援事業そのものの評価も改めて行う予定でございます。その評価を踏まえ、区内経済の持続可能な発展に向け、令和五年度末に開設予定の新たな産業活性化拠点において、さらに充実した支援を行ってまいります。

 

以上でございます。

【工藤 財務部長】  

私からは、労働報酬下限額について御答弁申し上げます。

 

区では、労働者の適正な労働条件の確保と事業者の経営環境の改善による区民福祉の増進という理念を高く掲げ、平成二十七年に公契約条例を施行して以来、公契約適正化委員会から御提言をいただきながら、労働報酬下限額をはじめとした各施策に取り組んでまいりました。

 

現在の委託等契約における労働報酬下限額は、時間単価千百七十円としておりますが、労働報酬下限額の設定には、区公契約の従事者の賃金底上げにより事業者全体の人材確保と定着につなげ、さらには、この好循環が地域経済の活性化へと広く効果が波及していくことが期待できると考えております。

 

今後の労働報酬下限額は、公契約適正化委員会の労働報酬専門部会において昨年設定した新たな中期的目標へ向け、段階的に引き上げていくこととされており、来年度の引上げ金額についても具体的な議論がなされております。

 

区といたしましては、これらの議論をまとめ、近々にいただく予定となっている同部会からの意見書の内容を十分尊重し、下限額引上げの効果を踏まえながら、区の財政状況等も考慮した上で適切に対応してまいります。

 

以上です。

【平沢 教育総合センター担当参事】  

私からは、二点お答えいたします。

 

まず、不登校特例校についてです。

 

子どもたちを取り巻く環境が変化している中、不登校児童生徒数の増加が顕著となっており、今後、不登校支援の取組とともに、従来の学校教育の枠組みを変えていくことが求められていると捉えております。本年四月に開設した分教室ねいろでは、子どもの自主性や個性を尊重した教育活動の下、以前、不登校だった生徒たちの安定した登校や学びにつながっており、こうした取組や成果は、全ての子どもたちにとって学びやすい環境を築いていく上で礎になるものと捉えております。

 

今後、生徒や保護者、教員からも意見を聞きながら運営の評価検証を行い、この間、培われたノウハウや具体的な実践事例等を不登校対応ガイドラインに反映し、不登校支援にとどまらず、全ての小中学校において従来の枠組みにとらわれない教育活動の展開につなげ、全ての子どもたちが安心して楽しく過ごすことができる環境の構築に取り組んでまいります。

 

次に、区立幼稚園についてです。

 

区では、乳幼児教育・保育施設をめぐる状況の大きな変化を踏まえて、区立幼稚園の集約化等に関する計画を七月二十七日の文教常任委員会において御報告させていただき、その内容はグランドビジョンの中にも取り入れられております。  計画の策定に当たっては、保護者の声等を参考にするとともに、策定後には全園において保護者への説明会を実施いたしましたが、保護者や地域の方々に一層の御理解をいただくために、機会を捉えて、グランドビジョンの考え方も含めて、より丁寧な説明や意見交換を行ってまいりたいと考えております。

 

今後は、グランドビジョン等を踏まえて、区立幼稚園の跡地の活用などにより、乳幼児教育・保育を含む子ども・子育て施策の再構築と支援の充実を図ってまいります。その際には、保護者や地域の声、区議会の御意見等を十分に伺いながら、関係所管部と連携して検討を進めてまいります。

 

以上でございます。

【小泉 教育政策部長】  

私からは、教育について二点お答えいたします。

 

最初に、教員不足への対応についてです。

 

教育委員会といたしましては、教員の働き方改革は喫緊の課題であると認識しており、これまでスクールサポートスタッフの全校配置などの人的支援や留守番電話の導入などの物的支援などを実施してきました。また、各学校においては、新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけとして、教育活動の見直しや精選、ICTを活用した教材等の共有化や事務作業の効率化を図っております。しかしながら、多忙化の解消や、途中退職や病気休職などによる教員不足への対応は、まだまだ十分とは言えない状況です。

 

教育委員会といたしましては、今後も人的、物的な支援などを通じて教員の多忙化解消を進めるとともに、区独自の取組についても、目的や内容を勘案しながら、実施方法の工夫、見直し、整理などを進めることで働き方改革を一層図り、教員が心身ともに健康で働きやすい環境の整備を進めてまいります。

 

次に、スピーキングテストについてです。中学校の英語スピーキングテストは、昨日、十一月二十七日に実施され、本日、生徒の受験状況についての報告を取りまとめているところです。

 

今後につきましては、運営主体である東京都において検証等が行われるものと考えますが、区教育委員会といたしましては、生徒の受験状況や全体的なスケジュール、受験会場、受験方法、結果の活用などの課題について、これまでの学校からの意見等も含めて改めて整理した上で、必要に応じて東京都教育委員会へ報告してまいります。

 

以上でございます。

【知久 教育総務部長】  

私からは、学校における副教材などの私費負担についてお答えいたします。

 

教科書は無償給付する旨、法で定められておりますが、児童生徒が使用する教材など個人所有となるものについては保護者負担となっております。一方で、例えば、彫刻刀や柔道着などを共用物品として貸し出すなど、それぞれの学校で工夫し、保護者負担の軽減に取り組んでおります。

 

教育委員会では、年一回、各学校から学年ごとの教材や実習に要する物品の品名や単価、数量などを報告させており、保護者負担の状況について現状を把握しております。今後は、学校間、学年間の傾向や違いなどを把握、分析し、他自治体の動向等情報収集も行いつつ、保護者の経済的負担をできるだけ抑えられるよう、学校とともに取組を進めてまいります。

 

以上です。

【柳澤 子ども・若者部長】

 

私からは、高校生世代の支援が切れ目なく続けられるように施策の展開を求めるについてお答えいたします。

 

区では、子ども計画に内包する子どもの貧困対策計画にて、高校中退防止に向けた支援を掲げ、現在、生活困窮世帯などの子どもと家庭を支える学習・生活支援の拠点事業や、ひとり親家庭などの子どもの学習支援事業について、中学卒業後も高校生が活用できる奨学金や給付金制度などの情報提供を行うなど、定期的に連絡しまして、アフターケアを実施してございます。また、ボランティアなどの世代間交流を通じ、学習習慣や生活習慣の習得をサポートする生活困窮の子ども支援事業では高校生も対象に実施しておりますが、高校生世代の支援が十分であるとは認識しておりませんが、令和五年度に実施予定の高校生世代も対象にした子どもの生活実態調査の結果も踏まえまして、次期子どもの貧困対策計画の策定において、高校生世代の切れ目のない支援の在り方についても検討してまいります。

 

以上でございます。

【山戸 高齢福祉部長】  

私からは、日常生活支援総合事業の総括について御答弁いたします。

 

この間、コロナ禍により利用者数が落ち込み、フレイルの広がりが危惧されましたが、ズームや動画を活用して自宅でも介護予防に取り組めるよう実施手法を工夫し、現在は利用者数の回復傾向が見られる状況にございます。今後も、区内の総合事業の対象者は増加傾向が続くと見込まれる中、新たに多様な担い手によるサービス提供も徐々に広がっております。

 

区といたしましては、こうした地域の力を後押しし、多くの高齢者が身近な地域で総合事業に参加し、住み慣れた地域で生き生きと暮らし続けられるよう、介護予防や生活支援の多様なニーズに応えるサービスを展開してまいります。

 

以上です。

【片桐 生活文化政策部長】

 

私からは、三点お答えいたします。

 

初めに、性暴力被害者支援についてです。

 

暴力は、被害者に恐怖と不安を与え、活動を束縛し、従属的な状況に追い込むものであり、その背景には、差別や性別での役割分担などに根差した経済力の格差や上下関係による力の支配という社会構造的な問題があることを十分に把握し、支援と根絶に向けた努力を続けていく必要があると考えております。特に性暴力は、その後の生活の様々な場面で甚大な影響を与えることが多く、支援に当たっては、庁内どの窓口でも性暴力を受けることの影響を理解し、適切に対応できるようにすることが大変重要と考えます。

 

現在、庁内で様々な連携や発信を行っておるところですが、今後そういった場や機会を捉え、性暴力についての理解を徹底し、相談者の理解に寄り添い、困難な状況から抜け出すプロセスや支援手法について研修等を実施してまいります。

 

次に、外国人移住者の支援についてです。

 

外国から移住された方が国から難民として認定を受けた場合、国民年金や福祉手当等の受給資格が得られるなど、日本国民と同様の行政サービスを受けることができます。一方、難民認定申請中の方は、仮滞在許可や仮放免など、その方の置かれた状況に応じて受けられるサービスが異なるため、窓口などでの丁寧な相談対応が必要となります。

 

区では、ウクライナ避難民への支援に際し、庁内でプロジェクトチームを立ち上げ、生活文化政策部を中心に、日常生活の様々な課題について切れ目のない支援に取り組むとともに、出入国在留管理庁や国連難民高等弁務官事務所など関係機関とも連携を図ってまいりました。

 

難民への対応につきましては、ウクライナ避難民支援で培ったノウハウを十分に生かし、関係機関及び区の外国人相談窓口をはじめとする関係所管と緊密な連携を図ることで、相談者のニーズを丁寧に把握し、適切な支援へつなげてまいります。

 

最後に、平和政策の取組についてです。

 

平和資料館では、現在、戦争から平和の尊さを考える取組のほか、人々の平穏な生活や尊厳を脅かす差別、貧困、ジェンダー、環境などの社会課題についても、日常生活での実践を促す取組を志向しているところです。

 

平和を創造するためには、他者の考え方を尊重し、お互いの信頼を形成していくことが重要であり、平和に係る問題を様々な視点を持った人と一緒に考え、協力して活動に移すことが平和文化を地域社会に根づかせていくものと考えます。  現在、学校への出前授業や平和に関するメッセージの展示、大学や青少年施設と連携したワークショップや平和交流など区民参加型の試みを行っておりますが、今後も検証と改善を繰り返していくことで、区民に取組を広げてまいります。

 

以上です。

【釘宮 みどり33推進担当部長】  

私からは、気候変動対策の視点を持ったまちづくりについてお答えいたします。

 

議員お話しの北烏山七丁目の敷地は、貴重な自然として地域で長年親しまれてきた岩崎学生寮周辺の約三ヘクタールの樹林地でございます。整備に当たりましては、樹林地としての保全を求める地域住民の長年の思いを踏まえ、豊かな自然を生かすことを基本方針として進めてまいります。また、併せて新設する六メートル道路につきましては、公園利用者や地域の皆様の安全な交通環境を確保しながら、緑地の整備と併せ、自転車などの環境負荷の低い移動を促進し、緑豊かな環境を感じられる整備を行ってまいります。

 

議員お話しのとおり、公園緑地は、CO2吸収のみならず、気候変動に対する適応策として、大気汚染の改善、雨水浸透による水害の軽減、ヒートアイランドの抑制など様々な効果があり、区民にこの効果を実感していただくことは、みどり33への共感を得るために重要なことだと考えております。

 

こうしたことを踏まえ、公園と道路一体で、自転車などで自然の中の道路を快適に移動し、緑がもたらす環境改善の効果を実感できるなど、気候変動対策のモデルとなる豊かな空間の実現に向けて検討してまいります。

 

以上でございます。

【桜井純子議員】

ありがとうございます。答弁の中にありました子どもの権利条約の内容です。命が守られて育つこと、最善の利益が優先されること、意見が尊重されること、差別のないということ、この四つの一般原則について副区長が触れられていましたけれども、この一般原則四つというのは、どの場面にあっても、本当に重要なポイントだと思います。ですので、子どもの権利というところに足を置いた、足場を置いた政策展開というのが望まれると思うんですね。

 

ですから、例えば学校給食の件ですけれども、これは経済的な下支えということも必要なのかもしれません。だけれども、子どもの権利というところに照らせば、経済がどうあろうと子どもの権利を守る、子どもの教育をどういうふうに考えるのか、社会の中で子どもがどう位置づけられるのかということが大切なんだと私は思います。

 

私たち会派の視点としては、この子どもの権利ということを踏まえて、学校給食費の件についても考えていくべきだと思っておりますし、今回取り上げさせていただきました教育費全般の無償化ということですけれども、これについても経済対策という視点ではなく、子どもの権利としてどうなのか、それが今、日本の教育の中で実現されているのかということをやっぱり徹底して議論をしながら、このことを進めていく必要があると思っています。ですから、まずは学校給食の完全な無償化というところを突破口として進めていただきたいということを重ねて要望します。

 

そして、幼稚園統合に関わる問題として、子どもグランドビジョンについて触れましたけれども、この子どもグランドビジョンをつくることはとてもいいことだと思います。それぞれがばらばらで子ども政策が行われているということではなく、一体となって子どもの育ちをどう支えていくかということがとても重要な政策のポイントだと思いますし、先ほど触れた子どもの権利条約の中にある四つのポイント、これを押さえていくことが必要だと思いますが、現在の大きく問題となっている幼稚園の統合問題というのは、そこに子どもが主役としているのか、これが問われているんだと思います。

 

その議論のプロセスについて、私はおかしいのではないかと申し上げているわけですけれども、この議論のプロセス、大切にしていかないと、幼稚園の統廃合の問題だけで地域にかなりの負担を与えているということ、そして、その背景は子どものグランドビジョン、子どもの政策を世田谷区はどういうふうに捉えていくのかということがいまだまだ固まっていないというところに問題があると思います。

 

この子どもグランドビジョンは私はいいと思いますけれども、この件についてしっかりと押さえてから、この幼稚園統合を考えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

【平沢 教育総合センター担当参事】  

再質問にお答えをいたします。

 

区立幼稚園は、これまでも配慮を要する児童について積極的にこれを受け入れ、手厚い支援をしてまいりました。今後も、このような各園において蓄積された様々な経験や知識を活用して、要配慮児を含めた三歳児からの教育、保育を実施するとともに、個々の児童の発達や特性に応じたきめ細やかな支援など、インクルーシブな教育、保育を推進してまいります。

 

また、グランドビジョンの考え方につきましては、子ども・若者部などの関係所管部との連携により調整を図りながら、子ども・子育て支援の機能転換と拡充を図るとともに、発達に課題がある子どもを含めた全ての子どもと子育て家庭について、日々の暮らしの身近なところで子育て支援につながるための場や機会を充実させることができるよう検討を進めてまいりたいと思います。

 

以上でございます。

【桜井純子議員】  

この子どもグランドビジョンのつくり方も含めて、政策の議論というのは透明性をしっかりと確保して、当事者参加で行っていかなくてはならないと思います。これがとても大事な区政の根幹に関わることだと思いますので、これからの議論の中でも重要視していきたいと思います。

 

以上で質問を終わります。