議会質問と答弁

2022年決算特別委員会福祉保健所管(10月4日)

◆ まず初めに、障害者権利の保障に向けた取組について伺います。 
 

二〇一四年、日本は障害者権利条約に批准、今年八月、スイスのジュネーブで国連障害者権利委員会による初めての日本審査が行われました。日本から障害者団体や個人など約百人もの方々が現地に行き、世田谷からも何人もこの派遣団に参加をしていました。日本の障害者政策の現状を委員に訴えました。委員会ではこれを参考に、日本政府との建設的対話、審査が行われ、九月には勧告が出されました。


 

勧告は、障害関連の法律等のジェンダー主流化、優生思想、能力主義を原因とする津久井やまゆり園事件の法的責任の検証、障害差別の権利救済の仕組みの構築、当事者参画の保障、インクルーシブ教育の実現、グループホームなど施設生活への懸念などで、これはほんの一部です。いかに日本では障害者権利がないがしろにされているかを実感する内容です。


 

国に向けられた勧告ですが、地域がどう受け止め、取組に反映していくかは重要です。初めて行われた国連障害者権利委員会の勧告を、区長はどのように受け止めたのでしょうか。お聞きいたします。


 

世田谷区は今定例会で、障害理解の促進と地域共生社会の実現をめざす条例を制定する予定です。誰もが互いに認め合い、尊重し共に生きる社会、インクルーシブ社会をつくるために重要な条例です。今後この条例が果たす役割に期待しますが、パブリックコメントからの時間が短く、まだ議論が不十分な点もあります。例えば国連からの指摘もあった脱施設にいかに向き合い、自立した地域生活を実現するのかなど、さらなる議論も必要です。


 

また、第二回定例会で指摘した権利救済の仕組みなどが盛り込まれていません。差別や人権侵害を受けたときの権利救済の仕組みの必要性についてどのように考えているか、区の見解をお聞きします。


  

次に、インクルーシブ教育の推進について伺います。


 

今回の国連障害者権利委員会の審査で厳しい目を向けられたのが日本の教育の現状です。現在の日本の教育は、障害を理由として子どもたちを分ける分離教育であり、分離教育そのものが人権侵害に当たることが指摘されています。


 

世田谷区は、インクルーシブ教育を目指すと教育ビジョンなど各計画に位置づけ、今年度はガイドライン策定に取り組みます。画期的とも言えるこの取組を評価するとともに、策定に当たって、当事者、保護者や学識経験者の参加を求めます。教育委員会の見解をお聞きします。


 

世田谷区は、インクルーシブ教育の実現に向け一歩ずつ進んでいますが、インクルーシブ教育の考え方が学校現場に行き渡っているかが課題です。例えば小学校では、普通学級に通っている障害のある子どもが、中学では同じようにはできないと言われたそうです。進学予定の中学校にはエレベーターがないことが理由のようですが、合理的配慮ができないことを学校に通えない理由にしていいのでしょうか。合理的配慮は義務です。インクルーシブ教育への理解を進め、子どもに合わせてバリアフリー化をするなど、合理的配慮の徹底を求めます。見解をお聞きします。


 

さらに、世田谷区が行う就学相談は、インクルーシブ教育を実現するための相談とすることが大切です。子どもの障害に着目して子どもを分けることを目的にした相談ではなく、地域の学校に通うための合理的配慮をいかに行うかなど、インクルーシブ教育の実現のための就学相談とすることを求めます。今後の方向性をお聞きします。


 

次に、子どもの安全で安心な環境づくりのために伺います。


 

昨年に続き、今度は静岡県牧之原市で、認定こども園の三歳の子どもが送迎バスに置き去りにされ死亡する事件が起きました。安全には細心の注意が払われるべき場所で、このような事故が短期間に繰り返されたことを重く受け止めなければなりません。


 

一方、世田谷区では、複数の保育園で園児への虐待行為が発覚し、報告を聞く限りでは、ある園では虐待行為が複数のクラスで繰り返し行われていて、その行為が虐待に当たるという認識が乏しいと感じました。また、一年以上も報告がなかった保育園での子どもの緊急事態への対応では、なぜこのような事故が起きたのか、保育園や区の対応に疑問を抱かざるを得ません。いま一度、保育園などの子ども施設の安全性について考えることが必要です。


 

世田谷区では、保育待機児ゼロを目指し、定員を増やすために、休憩室のスペースを保育スペースに転換するなど、かなり保育士の方々に無理をお願いしてきました。その上で、コロナ感染症対策が重なるなど、世田谷の保育園の働く環境はとても厳しい状況ではないでしょうか。現在、保育待機児はゼロになり、定員割れも出ています。例えば無理してつくり出した保育スペースを元の休憩スペースに戻すなど、物理的にも働く環境をよりよいものにし、保育士がゆとりを持って子どもと向き合い、あるべき保育に取り組めるようにすることが必要です。ルールで縛るだけではなく、働く人を大切にすることも、子どもの安心できる環境づくりに寄与すると考えます。区の見解をお聞きします。


 

文教常任委員会で、小学校の学校主事業務の民間委託について報告されました。今年四月に民間委託を導入する際には、二校の状況を検証し、今後どうするかを決めるということだったはずですが、ほんの数か月の実施で学校や受託事業者へのヒアリングをし、民間委託を一校増やすというものでした。ヒアリングの結果として示されたのは、カーテンレールをすぐに対応したということなど、求めてきた検証にはなっていません。学校主事の民間委託は、行政執行体制のスリム化、事業の効率的執行の観点から進めるとして実行されたわけですが、子ども施設の在り方として、効率化重視でよいのでしょうか。


 

学校主事業務だけの問題ではありません。保育園、幼稚園、児童館、学童クラブなど、子どもを取り巻く環境、施設を、世田谷区は公の責任を持ってどのように構築しようと考えているのか、そのための人員体制はどのようなものがふさわしいと考えているのか問われます。子ども関連の政策に民間の導入を考えるときに、何を優先して結論を出しているのか。単純に合理化、効率化が念頭にあるだけなのか、世田谷の子ども政策はそれでいいだろうかと不信感が深まります。


 

例えば学校主事の民間委託に代表されるような偽装請負の懸念があり、指揮命令系統が複雑化する現場は、学校環境にどのような影響をもたらすのか考える必要があります。区は何を優先し、子ども政策を実現していけばいいと考えているのかお聞きします。


 

最後に、政治的課題の民主的な決定プロセスについてお伺いします。


 

九月二十七日に予定される安倍元首相の国葬は日に日に反対の声が高まり、ある調査では、国民の六割以上が反対の意思を表明する事態となっています。安倍元首相は旧統一教会との関係が深く、広告塔だと信じた信者の子によって襲撃されました。旧統一教会との関係や影響の真相はまだ明らかではありませんが、ここにきて分かってきた旧統一教会と関係ある議員の多さから、政治と無関係だ、政治的な影響はないと言い切れるのか疑問を持つ国民が増えています。


 

さらに、国葬は、その決定のプロセスに問題があります。閣議決定で国葬を決めたことに対し法的根拠がなく、内閣の一存で国葬を行うのは民主主義に反する、民主主義の破壊的行為という批判があるように、国会審議を経ていないことに対する国民の不信は、全国各地の反対集会やデモとなって広がっています。会派として国葬に反対であることを表明しましたが、改めて今回の国葬と旧統一教会に対する区長の考えについてお伺いします。


 

以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)


   

【答弁:保坂 区長】

 

桜井議員にお答えをいたします。


 

まず、国連障害者権利委員会による審査及び勧告についての受け止めをお尋ねいただきました。
 先月、国連の障害者権利委員会による日本の取組への審査が行われ、日本政府に対し、障害者の強制入院をやめ地域社会での自立した生活の支援を行うことや、障害のある子どもたちの分離された特別教育をやめること、手話を公用語として法律で認めることなど、九十項目以上もの勧告が行われたと聞いております。


 

この勧告を通して、日本の障害者政策のいまだ未解決の課題が改めて明らかとなり、障害者権利条約の批准国として重く受け止めるべきものと捉えております。区といたしましても、様々な状況にある区民が、多様性を尊重しながら、価値観を相互に認め合い、安心して暮らし続けることができる地域共生社会を実現するために、今定例会に、世田谷区障害理解の促進と地域共生社会の実現をめざす条例案を提案しているところでございます。


 

新たな条例制定を契機として、国連障害者権利条約による勧告と、私たちのことを私たち抜きに決めないで、この大変有名になった障害者権利条約を議論してきた国連での障害当事者の合い言葉を十分踏まえて、インクルーシブ教育や地域共生社会実現に、勧告の趣旨を捉えながら、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。


 

次に、国葬、また旧統一教会についての区長の考えということでございます。


 

国葬儀について、岸田首相は、地方公共団体や教育委員会に弔意の表明などの協力要請はしないとしていることもありまして、区としては特段の対応はせず、半旗の掲揚等を行わないことを決め、教育委員会にも伝えているところであります。内閣の判断のみで進んだ決定プロセスについては、私自身、率直に言って、違和感を覚えます。


 

国葬令、これは戦前度々行われた国葬ですが、既に失効しておりまして、戦後は唯一、皇族を除いては、吉田茂元首相のみであります。ノーベル平和賞を受賞し、また長期政権を築いた佐藤栄作元首相のときにも見送られて、自民党・内閣合同葬になりました。なぜ今回国葬なのかという疑問が、私自身、納得しがたいものであります。


 

世論調査での賛否も次第に反対の方の声が大きくなっているものと捉えておりまして、心配なのはこの分断がこのことで広がるということにならないように懸念、心配をしております。


 

また、旧統一教会についてでありますが、霊感商法や高額寄附など社会問題を生じさせている団体としまして、今後一層警戒し、区としての関わりを持つことのないようにしていきます。過去五年にわたり、区が同団体及び関連団体を後援したり、協力することがなかったか、緊急調査を指示いたしました。二件確認をされました。このうち一件については、イベントの後援でしたので遡って取り消し、今後の名義使用の承認や広報掲示板の使用など、関連団体等が行う事業への協力は区として行わないよう指示を行ったところであります。


  

以上です。


   

【答弁:中村 副区長】

 

私からは、区は何を優先し、子ども政策を実現していけばいいと考えているかという御質問にお答えいたします。


 

区では、子どもが伸び伸びと安心して育つ環境をつくるため、保育園をはじめ、子育てステーションや区立産後ケアステーションなど多くの施設を設け、また世田谷版ネウボラなど様々な事業を実施してきております。子どもに関わる事業については、子どもの最善の利益を追求することを基本とし、特に子どもの安全は最優先すべきものです。


 

区は、子どもに関わる事業を実施する際には、全ての職員がこうした共通認識を持って、能力の向上や経験値の蓄積に努め、連携し合う環境をどう構築するかという視点から検討し、民間事業者の活用を含めた実施体制を判断しているところです。


 

引き続き区としては、こうした考え方を持って実施体制を整えた上で、民間事業者を活用する場合には、区の公的責任の下に実施状況を点検、検証し、指導等による必要な改善を行いながら、各事業が子どもを中心として、その効果が最大限発揮できるよう取り組んでまいります。
 以上です。

【答弁:須藤 障害福祉部長】 

私からは、権利救済の仕組みの必要性について御答弁を申し上げます。


 

本定例会に御提案しております障害理解の促進と地域共生社会の実現をめざす条例案、この条例では、障害の社会モデルの考え方を基本とし、障害者差別について、障害を理由とする差別や、合理的配慮に関する相談窓口を設けて対応することを定めております。権利侵害が疑われる場合には、都や国の人権相談など重層的な相談対応の仕組みがあると考えておりますが、これまで区にあった相談内容を見ますと、個人の尊厳に関わる内容などもあったというふうに認識をしております。障害者の権利救済の仕組み、それからこのたびの国連からの勧告、こうしたことを含めまして、改めて検討する必要があるというふうに考えております。


 

今後、区の専門相談員が法律の専門家から助言をいただく機会を設けることや、独立した機関の設置など、先ほどの権利侵害の部分について、関係する制度との整合も確認しながら、障害当事者や家族会、関係機関などからの御意見もいただき、検討をしてまいります。
 私からは以上です。

【答弁:小泉 教育政策部長】

 

私からは、インクルーシブ教育の推進について二点お答えいたします。


 

まず最初に、策定予定のインクルーシブ教育のガイドラインの策定に際して、保護者等の参画についてでございます。
 教育委員会では、令和四年三月に第二次世田谷区教育ビジョン及び世田谷区特別支援教育推進計画の調整計画を策定し、教育総合センターをインクルーシブ教育の拠点と位置づけ、教職員の育成を図るとともに、子ども一人一人の特性に応じた支援の強化に向けて取り組んでいるところです。


 

インクルーシブ教育の実現に向けては、各学校の校長や教職員等が共通認識を持って取り組めるよう、ガイドラインを策定し、周知徹底することが有効であると考えています。そのため、ガイドラインの策定に当たっては、専門的な知見を有する外部有識者の活用や、当事者である児童生徒や保護者の意見の聴取等についても検討してまいります。


 

次に、インクルーシブ教育政策についての一貫性についてでございます。


 

インクルーシブ教育の実現に当たっては、小中学校のいずれの場面においても、配慮を要する児童生徒に対し一貫した支援を行っていくことが重要であると考えております。小中学校への進学の際には、保育園や幼稚園と小学校、小中学校間で綿密に情報共有を行い、一人一人の子どもの特性を把握するとともに、適切な支援ができるよう努めているところですが、保護者から、合理的配慮に関する説明や対応が不十分ではないかという御意見が寄せられることもございます。こうした現状を踏まえ、教育委員会としては、学校に保護者の御意見を踏まえて適切な支援を行うよう指導するとともに、来年度をめどに策定を予定しているガイドラインに、進学に際する学校間の情報共有の在り方について盛り込み、全校へ周知徹底を図ってまいります。
 以上でございます。

【答弁:平沢 教育総合センター担当参事】

 

私からは、就学相談の今後の方向性についてお答えいたします。


   

インクルーシブ教育の実現に当たっては、配慮を要する子どもたちが安心して就学できるよう、就学先で受けられる指導や支援の内容、教育環境等について分かりやすく情報提供を行うことが重要であり、その中で、就学相談が果たす役割は大きいものと捉えております。


 

教育委員会といたしましては、まずはガイドラインの策定や好事例のデータベース化など、区におけるインクルーシブ教育の実現に向けた取組について、就学相談に関わる職員一人一人の理解を深めるとともに、それらを活用し、地域の学校で受け入れることを前提に、丁寧かつ親身になって相談に応じ、保護者が安心して就学先を選択できるよう取り組んでまいります。


 

教育委員会としましては、国連の障害者権利委員会からの勧告を見据え、保護者が安心して相談のできる就学相談の在り方等について検討し、区におけるインクルーシブ教育の推進に取り組んでまいります。
 以上です。

【答弁:和田 保育部長】 私からは、保育施設における子どもの安心できる環境づくりについて御答弁いたします。


 

保育施設は、大切なお子さんをお預かりし、健やかな育ちを保障し、最も安全で安心して過ごせる場所でなくてはならないと認識しております。保育施設における事故の背景といたしまして、慢性的な人員不足による長時間労働や、子どもに向き合う時間が十分に取れないことによる意欲の低下とそれに起因した高い離職率などが指摘されています。


 

区内においても、年齢が若く経験も少ない職員が多い園や十分な休憩スペースがない中でも、お子さん一人一人に向き合いながら保育を行っていただいている園が少なくないと伺っております。区といたしましても、巡回支援の充実強化等を進めることで、園との対話を重ね、各園に寄り添っていくとともに、保育現場の状況をしっかり受け止め、お子さんの命を預かる現場としてふさわしい職場環境の構築に向け、今後の園支援を一層進めてまいります。
 以上でございます

 

【桜井純子】今回、九月に国連から障害者政策について数々の勧告が出されたということを踏まえて質問をまずさせていただきました。人権というものについては日々変化して、その認識というのが広がってきています。例えば私が初めて議員として活動を始めた約二十年前になりますけれども、その頃はセクシャルマイノリティー、LGBTQという、そういう人権に対する認識というのはほとんど皆無だったという状況ですが、現在ではパートナーシップ宣誓などもありますし、がらりと変わっています。人権の認識というのはこうやって変わっていくということを考えれば、常にその政策の内容はブラッシュアップされていかなくてはならないと思います。


 

今回の勧告を受けて、例えば条例の中で障害者の脱施設、脱入院というところを、さらに深堀りをして考えていくということも求められていくと思いますので、この点に関して、含めて決算特別委員会でまたやり取りをさせていただければと思います。